例年、実施されている「環境問題について学ぶ」の特別講演会を、今年のかすみ祭
では、最近女子大に着任されたお二人の先生による、身の回りにある化学物質に関
係した講演会として企画しました。柳橋先生には今話題の放射性物質も含めて水道
水の安全性についてお話しいただきます。野馬先生にはカネミ油症で注目されたPC Bに関する話題を提供していただきます。秋の一日、最先端の科学に触れてみませ
んか。


《講演1》 「水道水は安全か?」
講師:柳橋泰生 教授(福岡女子大学国際文理学部環境科学科所属)

蛇口から出てくる水道水。私たちは飲み水のほか、炊事、洗濯、お風呂、掃除、トイ
レ、洗車、庭の散水など生活のいろいろなところで水道水を使っています。『水道水が
危ない』というような週刊誌の見出しを見るとびっくりしてしまいます。また、先日の大
震災では原発事故の影響で水道水から放射性物質が検出されました。水道水は本
当に安全なのでしょうか。
水道を巡っては、施設の老朽化、地震や日照りによる断水、水道料金の地域格差、
水道従事者の高齢化などさまざまな課題があります。このような中、今回の講演では、
水道水の安全性についてお話をします。病原微生物の混入、油や農薬などによる水
源の汚染、水道管からの金属の溶出、消毒により生成される有害物質、ビル・マンシ
ョンの貯水槽での水質の劣化など水道水の安全を脅かす様々な要因を例にあげて、
水道関係者が実施している対策を解説します。水源から水を導き、きれいにして、そ
の水を汚さずに蛇口まで配ることは、ハードとソフトの両面から持続的に努力をして
はじめてできることです。水源から蛇口に至る水道施設の構造や安全な水道水を確
保するための制度とともに、最近の新しい試みについてもわかりやすく説明します。

《講演2》 「PCB(ポリ塩素化ビフェニル)の処理について」
講師:野馬幸生 教授(福岡女子大学国際文理学部環境科学科)

油症は1968年に福岡県・長崎県を中心とする西日本一帯で多発し、これまでに約
2000人の患者さんが確認されている。原因はPCB(ポリ塩素化ビフェニル、 polychlorinated biphenyl)が混入したライスオイル(米ぬか油)の摂取による
食中毒症であることがわかり、1972年にPCBの製造中止、回収・保管が義務づけ
られた。その後の研究により、原因については、PCBを高温に加熱して使用したた
めに生じたダイオキシン類などPCB関連物質が重要な原因物質であることも分かっ
た。PCBの処理については、1100℃以上での高温焼却法による熱分解処理を想
定して施設設置を試みたが賛同が得られず、約30年間保管を継続することとなっ
た。長期保管による紛失など保管継続によるリスクの増大が懸念され、1998年よ
り脱塩素化法などの化学分解法で処理を推進してきた。2004年には国による最初
のPCB処理施設が北九州市に建設され、本格的なPCB処理が始まった。現在全
国5カ所の処理施設でPCBの分解処理が進んでいる。
今回は、北九州事業における処理施設を中心に、処理方法や事業化までに検討
した事項、施設設計や安全対策などPCB処理の概要について紹介する。また、そ
の後新たに問題となった、低濃度のPCBに汚染された廃電気機器等の処理につい
ても触れてみたい。